【ニャーゴロ新聞:医学研究所vol.4】(社説)あなたにUSMLEをオススメしない10の理由

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もしあなたが大学の構内を歩いているとすると、きっと真新しいFirst aidを大事そうに抱える医学生を見かけることでしょう。ここはアメリカでしょうか?いいえ、日本です。日本人医師がアメリカで臨床を行う上で取得する必要があるUSMLEですが、昨今の医学生業界ではその受験、もしくは勉強が空前のブームになっています。今日はその異常ともとれる流行に筆者自身の体験も踏まえて切り込んでいきたいと思います。
※この記事は筆者が独断と偏見を元に匿名で私見を語ったものであり、特定の他者を誹謗中傷する類のものではないことだけを冒頭で明記しておきます。

今月号の論文(参考記事)

【USMLE】USMLE STEP1の勉強方法〜CBT受験後9ヶ月間集中型〜


関連分野:医学教育

理由1)合格率が低い

まず初めにUSMLE STEP1、STEP2CK、STEP2CSの米国外医学部卒業者の合格率はそれぞれ78%、77%、84%です(古いデータのためSTEP2CSについては近年変動あり)。日本の医師国家試験の合格率が90%なのに対し低い数値となっています。しかし想像してみてください、希望に胸を膨らませてFirst Aid STEP1を購入した学生のうち一体何%が合格できるでしょうか?つまり、受験すること自体へのハードルが異常に高い試験であるということが言えるでしょう。

理由2)お金がかかる

受験することへのハードルが高い理由の一つに受験費用があります。筆者がSTEP1受験にかかった費用は概算で30万円、アルバイトでどうにかなるとは言い難い金額です。また、STEP2を合わせると合計100万円を下ることは決してないでしょう。

理由3)時間がかかる

合格するにはある程度の勉強時間が必要です。特に序盤はGoogleでわからない単語を検索する作業が勉強の中心内容となります。STEP1取得には10000問程度の問題を解くことになるため、1日5時間勉強し50問解くとしても200日間の勉強が必要となります。

理由4)労力がかかる

突然ですが僕は勉強が嫌いです。1時間通しで勉強したら昼寝したくなってしまいます。

理由5)英語が得意になる、わけではない

さて、無事STEP1に合格したとしましょう。世間的にはアメリカの医学試験に合格した人物といことになるので、当然英語もペラペラということになるでしょう。

外国人「Hellow, how are you doing, today??」
日本出身STEP1合格者「あー、あいむふぁいんせんきゅー」

そう、彼は医学英語をGoogleで調べただけの人物です。

理由6)一生使うことのない知識が問われる

STEP1勉強を通じて、アメリカで臨床をしないのであれば一生出会わない知識を得ることができます。例えば、ヒストプラズマ・ブラストミセス・コクシジオイデス等の真菌たちとその居住地を覚える必要が有ります。ミシシッピ川周辺で洞窟探検をしてはいけません、ましてや別の疾患ですがマサチューセッツにキャンプに行くなんて自殺行為です。顔面麻痺になりたいんですか?

理由7)ハイスコアを取るのが難しい

これについてはもっと参考になる記事がいっぱいあるはずです。

理由8)アピールにならない?

USMLEを取得していると日本での就活で有利でしょうか?正直なところ面接官をやったことがないのでわからないですが、もし今僕が面接官をやるとたら一緒に仕事をしたい人物を選びます。要するに、人柄や性格をみたいです。

やっぱりやさしいひとがいいんだなあ。 にゃーごろお

理由9)自分のやりたいことを見失う

苦労してSTEP1を取得したとしましょう。さて、First Aidを手に取った日の自分は何がやりたかったのでしょうか?病気に苦しむ患者さんを助けたかったんでしょうか?お金儲けをしたかったんでしょうか?アメリカで医師として働きたかったんでしょうか?シンプルに医学を勉強したかったんでしょうか?優越感に浸りたかったんでしょうか?日本の履歴書に書きたかったんでしょうか?

ほらね、忘れてるでしょ。

理由10)そもそもアメリカで採用されない

これはあまり触れられてないことですが、苦労してECFMGを獲得してもアメリカでポジションを獲得するのは至難の技です。米国外医学部卒業者全体の内科レジデンシーマッチ率はSTEP1のスコアが230点で60%、250点で80%となっています。外科はより難しいようです。

「これからは研究者に戻り、もう二度とノーベル賞のメダルを見ることはないだろう」とある日本人研究者の言葉です。人間は弱いもので過去に自分が成し遂げたものにしがみつかないと生きていけないのかもしれません。しかし、今この瞬間を生きるのがニャーゴロ探偵事務所の社訓です。話が脱線しましたが、こんなに頑張らなくてもいい理由があるのも関わらずUSMLE合格を目指して努力することができる医学生のみなさんを尊敬していますし、応援しています。

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