
【皮膚科】現役 皮膚科医の先生のお話を聞く~皮膚科の魅力と皮膚科医としての生き方~
皮膚科が対象とするのは人間最大の臓器である「皮膚」であり、皮膚に起こるあらゆる事象(アレルギー・免疫・感染症・先天異常etc)がその対象となる。そういう意味で、皮膚科は「内科」「外科」そして「病理学」「免疫学」といった要素を持ち合わせており、学問として非常に奥深く、そして、とても幅広い科であるといえる。今回は、現在、皮膚科医として働いておられる山口泰之先生にお話しを伺った。
――先生にとって皮膚科の魅力とは何でしょうか?
僕が、皮膚科の魅力の一つだと思っているのは、「手軽さ」です。皮膚科では、患者さんの症状が肉眼で確認できます。つまり、目で見てパッとその病状・様態がわかることが多い。であるから、診断を経てすぐに具体的な処置に移りやすい。たとえば、視診して、「あ、ここが悪いんだ。じゃあ手術で切除しよう」といった感じ。もちろん、すべてがこの通りではないけど。もう一つは、患者さんのQOLに直結しているということ。皮膚科では他の科に比べて、扱う病気が命に直結するものではないことが多い。それがいいことなのかどうかは別として、むしろ患者さんのQOLにより直結していると思うんです。皮膚の異常(アトピー・かぶれ・ニキビとか)って他人の目に晒される場合が多い。それだけに、これらの治療は単に病気の治療ということにとどまらず、患者さんのQOLの向上・維持につながると思うんです。
――皮膚科医に求められるものとは何でしょう?
皮膚科では出てくる病名がとくに多いように思います。病気の状態(症状)が目に見えるものだから、どんどんいろんな病名がつけられていくんです。だから、これらの病気をより大きい区分から順々にカテゴリー分けしていくことが大切ですよね。もちろん、これはすべての科、ひいては世の中すべてのことに当てはまることだけど。そうして自分の中で大量の知識をしっかり体系化して、それらを自在に運用・駆使できるようにすることが必要だと思います。たとえば、僕は「あたらしい皮膚科学」という教科書に沿って知識を整理していきました。あとは、一日にたくさんの外来の患者さんが来るから、それをしっかりこなす力が必要かな。

――最近、将来医局に入るかどうかについて悩んでいるのですが、その点に関して先生のお考えを教えてください。
たしかに、人によって様々な意見があると思います。僕は医局に入っていますが、医局では医局人事によって様々な関連病院へ派遣されることが少なくありません。この点がデメリットに感じる人も多いかもしれません。しかし、自然に様々な病院で経験を積むことができるので、僕はこれが医局のメリットの一つだと考えています。いろいろな職場で様々な考え方に触れることができるので。あとは、専門医の資格を取ろうと思っているのでしたら医局に入っておくのがよいように思います。
――皮膚科医として開業するということに関してはどうでしょうか?
僕は将来的には開業するつもりです。皮膚科の先生はとくに開業する先生が多いように思います。僕の同期もみんな将来開業する予定だそうです。よく、開業医の方が収入がいいという意見がありますが、確かにそれはほとんどの場合で正しいと思います。ただ、勤務医と開業医の仕事の内容を比較すると、開業医の場合はどうしても自分の病院で日々の外来を淡々とこなすという側面が強くなると思う。勤務医に比べ、精神的にも物理的にも束縛が強いように思うんです。また、仮に開業したとしても、常に知識をアップデートすることを怠ってはいけないと思う。様々な文献やネットを通して常に新しい知識を取り入れていかないと、周りに取り残されてしまう。
――開業に適した年齢はあるのでしょうか?
一般に、30代半ばから30代後半にかけて開業する人が多いイメージ。ただ、何歳にならないと開業してはいけないということはないです。極端な話、卒業してすぐ開業しようと思えば一応できます。(周りの目とを気にしなければ)ただ、やはり開業するには皮膚科医としてのスキルを十分磨いてからでないと意味がないと思います。逆に言えば、それが大切で年齢は本質的な問題ではないとは思いますね。