
「脳の成長は大人になると止まる」はホント!?
脳の成長は大人になると止まってしまうという話を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、近年の研究によると、脳のある領域は大人になっても成長を続けるらしいことが分かったそうです。
人間の脳は、およそ第三妊娠週から始まると言われています。まず、神経前駆細胞とよばれる細胞が、それぞれ特定の神経細胞体へと分化し始めます。
この胎児期におけるプロセスは、出産まで続き、中枢神経系や末梢神経系の基本的な構造が徐々に確立されていきます。出産後、脳は引き続き成長を続けていき、小学校に入学するようになるまでには、脳の大きさは4倍にも増加し、6歳になるまでには大人の脳の容積の約90%にも達するそうです。
幼少期において、脳内では神経間に過剰にシナプスが形成されます。そして、思春期を通して不要なシナプスが除去されていきます。この一連のプロセスのことをシナプス刈り込みと言います。このシナプス刈り込みというプロセスは、成熟した機能的な神経回路の形成にとって非常に重要なものであると考えられています。しかし、最近の研究では、シナプス刈り込みではなく、脳の容積の増加が脳の成熟に大きく関与するという見解があがっているようです。
顔認識と空間認識に関する脳領域の発達
カリフォルニア州のスタンフォード大学のJesse Gomez(以下、ゴメス先生)率いる研究チームが行った実験によれば、外科的かつ量的な観点から、MRIを用いて、被験者たちの脳組織を比較しました。測定したのは主に脳皮質の厚さです。
さらに、研究チームは検死体の脳を用いて、脳組織の容積を計測しました。
顔認識にかかわる脳領域は大人になっても成長を続けている
以上のことから分かったのは、右脳における顔認識と空間認識に関わる領域の脳皮質組織の成長の仕方が異なっていたということです。
大人の脳において、顔認識に関わる領域は、その容積が増加しており、反対に空間認識に関わる領域は容積に変化が認められなかったということです。
顔認識に関わるとされる領域は、紡錘状回とよばれており、この領域における脳組織の成長は、顔の選択や、顔の認識そのものの機能的な改善に関与していると考えられました。
研究チームは、顔認識に関わる領域における容積の増大が、髄鞘形成によるものなのかどうかを確かめるため、検死体を用いて検証してみたところ、どうやら髄鞘形成だけが、この容積増大の原因ではないことが分かりました。
そこで、研究チームは、この予想外の容積増大は、脳における細胞体の増大など様々な要因によって引き起こされるのだろうと考えました。