【ウイルスは生きている?】コロナウイルスから紐解くウイルスの正体

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2020年1月 現在、コロナウイルスが世界的に猛威を奮っています。”敵を知り、己を知れば百選危からず” という言葉もありますが、まずは「コロナウイルスって何なの?」ということから「結局、ウイルスって何?」ということまでを順に考察していきます。

 

コロナウイルスって何?

実は、コロナウイルスは今回の新型を含めて、現在のところ7種類あると言われています。
風邪の原因とされる4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)である、「HCoV-229E」、「HCoV-OC43」、「HCoV-NL63」、「HCoV-HKU1」。風邪の10~15%(流行期には35%)はこれら4種のコロナウイルスが原因と言われています。これに加えて、「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)」・「中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)」の2つ。そして、最後が今回の新型コロナウイルス「2019-nCoV」です。

なぜ、今回のようにウイルスの新型が出現するかというと、ウイルスは周りの環境の変化に応じて常に変異を繰り返していくからです。ウイルスは、生殖によって遺伝子が組み変わることはなく、以下の2つの仕組みによって、変異が引き起こされます。

1.コピーミスによる突然変異
通常の生物でも、遺伝情報の複製時におけるコピーミスや、紫外線・化学物質などによる後天的な情報破壊によって、遺伝子に突然変異が起こります。しかし生物にとって、このような突然変異が適応的である可能性は極めて低い為、損傷を修復する修復酵素によって、変異した遺伝情報は修復されます。この修復酵素によって、生物の突然変異の発生割合は、概ね1/100億にまで抑えられているのです。

突然変異は、遺伝情報を持つウィルスでも生物と同じように起こります。しかし、ウィルスは生物と違って複製された遺伝情報に誤りがないかどうか調べるチェック機能も、修復酵素も存在しません。そのため、ウィルスは遺伝子の複製過程において、突然変異が大量に生じ、コピーミスに起因する突然変異の発生率は、30%に及びます。

2.複数のウィルス混ぜ合わせによる変異
2種類のウィルスA・Bが同一細胞に感染した場合、それぞれのウィルスの遺伝情報が混ぜ合わさり、全く新しい別のウィルスCが発生することがあります。こうして誕生したウィルスCは、ウィルスA・B両方の遺伝子(特徴)を持つことになります。たとえば、

ウィルスA:非常に凶暴な感染力で、ヒトに感染しない。
ウィルスB:感染力は非常に弱いが、ヒトに感染する。

とした場合、A・Bの混ぜ合わせによって誕生したウィルスCは、Aの特徴である凶暴な感染力と、Bの特徴であるヒトへの感染という特徴を併せ持つことになります。このような混ぜ合わせによって、これまでヒトに感染しなかった凶暴なウィルスが、突然ヒトに感染するようになります。

といった具合に、ウイルスは物凄いスピードで 変化 ≒ 進化 していきます。どれくらいのスピードかというと、通常の進化、つまり、自然淘汰や自然選択による進化では、ひとつの種が ”進化” を完了するのに800万年ほど掛かると言われています。これに対して、ウイルスの進化は 通常の進化のスピードを1とすると、100万ないし200万倍の早さになると言われています。

ところで、ウイルスは、エンベロープと呼ばれる構造を持つものとそうでないものの2つに分けることができます。今回のコロナウイルスは前者の方で、ウイルスの外側を覆うエンベロープと呼ばれる膜状の構造を有しています。エンベロープはその大部分が脂質からできているため、アルコールや石鹸などで洗うことでこの膜構造を破壊することができます。よって、新型コロナウイルスに対しても、アルコールや消毒液による手洗いが有効であると言えます。

ちなみに、コロナウイルスの名前の由来ですが、その外見が太陽の周りに見える自由電子の散乱光であるコロナ(Corona)=王冠 に似ていることから、ラテン語で王冠を意味する ”coronam” にちなんで名前が付けられたそうです。

ウイルスは生物?

生物学的には…
ウイルスの活動やふるまいだけを見ると、ウイルスはまるで生物 ”かの” ように見えます。”かの” とあえて付け加えたのは、「ウイルス=生物 かどうか?」という議論には多くの意見があり、専門家たちの間でもこれといった明確な答えが出ていないのが現状だからです。しかし、生物学の世界では一般にウイルスは「非生物」と扱われています。その最大の理由は、ウイルスは「細胞」という構造を持たないからです。

細胞とは簡単にいうと、生存に必要なエネルギーの産生、物質の代謝や遺伝子の複製といった様々な化学反応のための空間です。また、細胞は一般的に増殖の単位でもあり、細胞分裂によって、自分の子孫を生み出します。このように細胞という構造は、増殖や代謝といった生物の基本的な性質を支える非常に重要な役割を果たしているのです。

一方のウイルスは、その細胞から遺伝子だけが飛び出し、タンパク質からなる殻を被って一人で放浪しているような存在です。だから、一人ではエネルギーの生産も代謝もできず、他の生物に ”居候” させてもらえないとまともに活動することができないのです。このことが「ウイルスは非生物」という生物学の常識に対する根拠になっています。

すべての生物(細菌、植物、昆虫、脊椎動物…)は、それぞれを宿主とするウイルスを持っています。バクテリアですら です。しかし、ウイルスの宿主とならないただ一つの存在、それが「ウイルス」なのです。『ウイルスはウイルスに感染されない。』このことからも、ウイルスが生物ではない。

…と、つい最近まで考えられてきました。

 

生物学の常識が揺るぎ始める
しかし、近年になって、この常識が揺るぎ始めているそうです。

まず一つが、「カルソネラ・ルディアイ」という細菌です。この細菌は、「キジラミ」と呼ばれる微小昆虫の細胞内に、まるでウイルスのように寄生して生きています。驚くべきポイントは、生命活動に必須と思われる非常に多くの代謝系の遺伝子セットの一部、または全部を失っているということです!その遺伝子数は実に、たったの 182個です。

もう一つが、巨大ウイルス「ママウイルス(mamavirus)」の発見です。それまで知られていたウイルスは、その遺伝子の保有数はせいぜい数個から十個程度でした。しかし、このママウイルスをはじめとする巨大ウイルスたちは、その遺伝子の保有数がなんと4桁にまでのぼると言います。最大で2,500個ほど。先ほどのカルソネラの遺伝子数が182個であることも考えると、完全に「生物」と「非生物」の立場が逆転しているようにも見えます。(ママウイルスからしてみれば、「なんで遺伝子182個のお前(カルソネラ)が生物で、2,500個のおれが非生物なんだよッ」みたいな笑)

さらに驚きなのは、フラン ス・パリの冷却塔で発見されたというこのママウイルスの中から、「スプートニク(Sputnik)」と呼ばれる まったく別のウイルス様粒子が発見されたことです。つまり、『別のウイルス(ママウイルス)に 感染するウイルス』が存在すると言えるのではないか、ということです。

何をもって生物とするか
改めて、「ウイルスは生物か非生物か?」という問いですが、大雑把に状況をまとめると、「非生物」であるウイルスの方は、遺伝子が1個から2,500個ほど持つものまで徐々に複雑なものへと変化 ≒ 進化 しており、細胞を持つ「生物」の方も、三万個ほど遺伝子を持つものから、最低150個ほどしか遺伝子を持たない細菌まで、やはり様々な段階のものが存在しています。遺伝子の数だけで考える限り、この二つの集団は完全にオーバーラップしており、はっきりとした境界はつけようがない、ということです。

細胞構造を持たないという理由で、ウイルスを生物に含めない、と定義づけすることは可能です。しかし、ウイルスはもはや、そこらにいる細菌とさほど変わらない数の遺伝子を持つようになるまで複雑化し、進化する存在だったのです。それを「単なる物質」と見なすことは、もう難しいと言わざるを得えません。

そこで、別な切り口から考えるために、生命の起源について考えてみます。大きく二つの仮説があります。

▪︎ レプリケーター起源説
▪︎ 代謝起源説

の二つです。「レプリケーター起源説」は、複製が可能な構造を持つ原始的な化合物(レプリケーター)が、生命の起源になったという説です。一方で、「代謝起源説」は、生命のような定常状態を保っている系は、必ずエネルギーを外部から取り入れ、エントロピーを捨てる仕組みが必要であり、それを可能とする化合物のネットワーク、つまり代謝系が先に出来たとする説です。ざっくりと単純化して言えば、「遺伝子が先か、細胞が先か」ということです。現在の生物は、遺伝子と細胞の両方を持ち合わせていますが、そのどちらが生物にとって本質的なものかという問いでもあります。

遺伝子の変化が細胞の状態を変えることはあっても、細胞の状態が遺伝子配列を変えるような仕組みは知られていないことから、「レプリケーター起源説」を支持する学者は少なくありません。また、レプリケーターなしに生物のような複製や進化をしている存在は、これまで見つかっていないことからも、生物を生物たらしめている特徴は、根源的にはレプリケーターに依存していると言ってよいと思います。

原始的なレプリケーターはただの物質と考えられています。もし、そうであるなら私たち「生物」は、「物質」と呼ばれているものまで切れ目なくつながっている存在ということになります。そして、『ウイルスは、現在でもその生物と物質のはざまに存在している。』これが「ウイルスは生物なのか?」に対する一つの答えになるのではないでしょうか。

 

果たして、ウイルスが進化を続けることで生物になり得るのか?
非常に興味が湧きました。

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