
風邪のとき、ネギを首に巻け!これマジで効果あるの?
昔からよく、風邪の時にはネギを首に巻くと治ると言われてきました。一度は聞いたことがある人も多いと思います。これは単なる迷信に過ぎないのでしょうか?本当に効果があるのでしょうか?医学的な根拠に迫りたいと思います。
風邪とは何か?
まず、そもそも風邪とは何なのでしょうか?風邪とは一般に、細菌やウイルスが呼吸器系(鼻・のど)などに侵入して感染し、急性の炎症を伴う病気の総称で、厳密には「かぜ症候群」とよばれます。ちなみに、風邪の大半はウイルス性であり主な原因ウイルスとしては、”ライノウイルス”、”コロナウイルス”、”RSウイルス”、”パラインフルエンザウイルス”、”アデノウイルス”などといったウイルスです。ウイルス以外では、”一般細菌”、”肺炎マイコプラズマ”などといった細菌が挙げられます。
風邪を治すのはあくまでも自らの身体に備わっている”免疫力”です。私たちの身体にはとても高度な「免疫システム」が備わっており、それを担っているのが”免疫細胞”とよばれる細胞(=白血球)たちです。たとえば、そのうちの一つに、リンパ球の一種である「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」とよばれる細胞があります。これは、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃し破壊する能力を持っています。
ポイントはネギに含まれる成分
話を戻しましょう。なぜ、ネギを首に巻くと風邪に効くのか?ポイントはネギに含まれる”ある成分”であることが分かりました。それは、ネギの”におい成分”である「アリシン」とよばれる物質です。アリシンは、ネギのほかにもニンニクやタマネギ、ニラといったものにも含まれています。
アリシンって何?
アリシンについて軽く押さえておきましょう。さきに述べた通り、このアリシンはネギやニンニクといった植物に含まれている”におい物質”です。しかし、厳密にいえばこれらの植物にアリシンは含まれていません。
どういうことかというと、これらの植物中にはアリインとよばれる物質を含む細胞、そして、アリナーゼとよばれる物質を含む細胞がそれぞれ存在しています。アリインはアリシンの前駆物質(原料)であり、アリナーゼはアリインからアリシンを生成させる”酵素”です。で、これらの細胞が破壊されると、そこから中のアリイン、アリナーゼが細胞外へ漏出し、アリインとアリナーゼが反応することで初めてアリシンが生成されるのです。
アリイン ⇒ アリシン
(アリナーゼ:酵素)
これは、植物側が草食動物から身を守るための手段であると言われています。つまり、植物が傷つけられると細胞が壊れ、それによってアリシンが生成されます。このアリシンは”におい物質”であり刺激臭となるため、草食動物もこの”におい”を嫌がるということらしいです。
また、アリシン自体も不安定な物質です。アリシンが生成されても、不安定なゆえに、そこからさらにいろんな物質へ変化していきます。代表的なものはジアリルジスルフィド(DADS)、ジアリルトリスルフィド(DATS)、アホエン…とよばれる物質です。これから紹介する、一般に”アリシンの持つ効果”と言われているものは、しばしば”アリシンが変化した後の物質の持つ効果”も含めたものを指しています。
アリシンの効果
さて、調べてみると、アリシンには以下のような効果があるらしいことが分かりました。
・疲労回復
・殺菌/抗菌作用
・抗酸化作用
・血液をサラサラに
それぞれ順に確認していきましょう。
免疫力アップ
1990年、アメリカ国立がん研究所が発表した結果によると、アリシンには免疫細胞である「NK細胞」を活性化させる効果があるということです。これによって、免疫力が向上し、また、がんを抑制するという効果にもつながると言います。
疲労回復
ビタミンB1は、体内における”糖代謝”において重要な役割を担っています。糖代謝とは、つまり糖からエネルギーを作り出すプロセスのことです。ビタミンB1は糖からエネルギーを作り出すのに必要な栄養素だと言えます。
アリシンは、このビタミンB1と結合して「アリチアミン」という物質になります。ビタミンB1は、この「アリチアミン」というかたちで存在していた方が体内への吸収率があがり(吸収されやすくなる)、分解されにくくなることで、より長い間体内に存在していられるようになります。これにより、ビタミンB1の利用効率を高め、体内でエネルギーを生み出すことで疲労回復を助けるという仕組みです。
豚肉などはビタミンB1が豊富なので、豚肉と合わせてネギやニンニクなどを食べると効果的なのではないでしょうか。
殺菌/抗菌作用
アリシンの殺菌・抗菌作用は、ウイルスやコレラ菌, サルモネラ菌, チフス菌, 淋菌…など様々な病原菌を殺菌・抑制することが知られており、最近では胃潰瘍の原因菌とされるピロリ菌に対しても有効であるという報告もあります。この殺菌・抗菌作用は元々、植物側が害虫や細菌から身を守るための自己防衛機能だと考えられています。このように、アリシンのウイルスや細菌に対する殺菌・抗菌効果が、風邪はもちろんのことインフルエンザや食中毒の予防・改善に大いに役立つのです。
抗酸化作用
アリシンには「抗酸化作用」があります。
”アンチエイジング”や健康に欠かせない要素の一つが、「抗酸化」です。ここで言う”酸化”とは活性酸素(ROS : Reactive Oxygen Species)によって引き起こされるものを指します。私たちは呼吸によって酸素を体内に取り入れますが、そのうち約2%がこの活性酸素に変化します。活性酸素そのものが悪者というわけではありません。活性酸素は、強い酸化力で体内に侵入した細菌から体を守ったり、体内におけるシグナル伝達や細胞の分化など、多岐にわたって体にとって必要不可欠な生理的機能を担っています。ただ、この活性酸素が増えすぎると体に悪影響となるのです。活性酸素は、酸化力が強すぎるため細胞などにダメージを与えてしまいます。
私たちの体にはもともと、この活性酸素の発生・増加を抑制したり、酸化を抑えるような”抗酸化物質”が存在しています。しかし、歳を取るにつれて、この抗酸化物質が減っていくそうです。
で、この活性酸素によって、具体的にどのような悪影響があるかというと、
・しみやシワ
・がん
・動脈硬化などの生活習慣病
などが挙げられます。そして、この活性酸素が増加してしまう要因もいろいろあって、
・大気汚染
・放射線
・電磁波
・たばこ
・ストレス
・排気ガス
・農薬
・環境ホルモン
などが挙げられるそうです。(ちなみに、環境ホルモンとは)
活性酸素の増加を抑えたり、酸化を抑制することで、老化の防止や健康そのものへつながります。
血液をサラサラに
アリシンには血液をサラサラにする効果があるようです。どういうことかって言いますと、一つはアリシンの持つ「抗血栓効果」です。医学用語では「血小板凝縮抑制作用」とも言います。血栓は血小板が集まって固まることでできてしまいます。アリシンは硫黄化合物なのですが、この硫黄化合物には血小板が集まるのを防ぐ作用があります。これによって血管が詰まることを防ぎ、血液がサラサラになる効果が得られるというわけです。
もう一つは、血中の悪玉コレステロールの上昇の抑制です。(参考論文:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21391887)悪玉コレステロールは、動脈の壁に付着する性質を持っているため、動脈が厚くなったり硬くなったりする、いわゆる動脈硬化を引き起こします。このコレステロールの上昇が抑えられることで、血流が改善する効果が見込めるというわけです。
これらの効果は、高血圧や動脈硬化の防止につながり、それはつまり心筋梗塞や脳梗塞などの予防になります。
じゃあ、首に巻いてないで食えよ
ネギのもつ様々な効果を見てきましたが、そんなにすごい成分が含まれているなら首に巻いてないで食べればいいじゃん、って思いましたよね?その通りです。(笑)ネギを食べたほうが効果的なようです。(当たり前)ただ、同じ食べるのでも、なるべく効果的に食べたいですよね。アリシンの効果を最大限に引き出すためにも、まず、ネギの細胞を壊す必要があります。なので、切り刻んだり、つぶしたりして食べるのがよいでしょう。また、アリシンは熱に弱い物質で、加熱しすぎると壊れてしまいます。なので、加熱しすぎないで食べた方がよいと思います。
首に巻くことのメリットって…
ただ、このままだとあまりにも悲しいので、敢えて首に巻くことのメリットを考えてみました。
アリシンは”におい成分”であることはさきにも述べました。”におい成分”は基本的に揮発性が高く、気体の状態で存在することが多いです。ネギを首に巻いておくことで、つねに首もとからアリシンが揮発し続けるため、呼吸器系(鼻や口)からアリシンを吸い続け、体内へ取り入れることができるのではないでしょうか。