
【花粉症】意外と知らない?!花粉症のしくみ:花粉症とアレルギー反応
新年度の始まりである、春。この時期に私たちを苦しめるのが”花粉症”です。今回は、”花粉症”のメカニズムを免疫学的な観点から考えてみました。
私たちの体には、外敵(細菌・ウイルス…etc)から自身を守るための免疫防御システムが備わっています。しかし、この免疫防御システムは私たちの体にとって利益をもたらすばかりでなく、時として不利益となるように働く場合があります。たとえば、ほこりや花粉なんかはよほど大量でない限り、体内に入ってきてもそれほど悪さをするわけではありません。しかし、これらに対して「過剰(必要のない)な免疫防御反応」が起こる場合があります。これが、アレルギー反応です。花粉症は、花粉に対する免疫防御反応が過剰に働いてしまうことによるアレルギー反応と考えることができます。
Ⅰ型アレルギー反応
アレルギー反応は、関与する抗体の種類や反応の形態からしばしばⅠ~Ⅳ型の4つの型に分類される。この内、花粉症はⅠ型(即時型)アレルギー反応が大きく関与する。Ⅰ型(即時型)アレルギー反応に関わる重要な物質は大きく3つで、
IgE抗体
肥満細胞
ヒスタミン
である。
私たちの体内における免疫システムにおいて重要な役割を担っているのがリンパ球であり、これは大きくT細胞とB細胞に大別できる。また、皮下組織をはじめとした体の様々な部位には抗原提示細胞と呼ばれる細胞が存在し、体内に侵入してきた抗原を認識し、抗原の侵入に備えて様々な連絡物質を産生する。これらの連絡物質が体の各部位に作用することで、様々な反応が生じる。同時に、抗原提示細胞はT細胞に抗原の情報を伝える。情報を受け取ったT細胞は次にB細胞へこの情報を伝える。B細胞はこれを受けて、侵入した抗原に特異的な抗体を産生する。この抗体が抗原に結合することで、白血球による抗原の貪食や、抗原の不活性化などの各種の免疫反応が促進される。
ところで、抗体には5種類存在しており、それぞれ、IgG・IgM・IgA・IgD・IgEである。今回のⅠ型アレルギー反応に関わる抗体は、IgE抗体である。このIgE抗体は、体内の皮下組織や粘膜に多く存在する肥満細胞とよばれる細胞に結合する。肥満細胞の表面にはIgE抗体を受け入れる受容体が発現しており、この受容体を介して両者が結合する。肥満細胞上のIgE抗体に抗原が結合すると、肥満細胞の内部に貯蔵されている様々な化学伝達物質が放出される。(脱顆粒という)

出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構(https://www.jst.go.jp/pr/announce/20140609-2/index.html)より (注)ケミカルメディエーター=化学伝達物質 マスト細胞=肥満細胞
ここで放出される化学伝達物質の一つがヒスタミンと呼ばれる物質である。ヒスタミンは、血管の拡張や血管の透過性を亢進させる作用があり、また”痒み”の直接的な原因となる。血管の透過性が亢進してしまうことで、水分が血管外の組織へ漏れ出してしまう。すると、皮膚がボコボコになってしまったり、或いは、鼻水が増加してしまうなどといったアレルギー症状が発生する。
ここで、Ⅰ型アレルギー反応の機序をまとめると、次のようになる。
⒈ 花粉(=抗原)が鼻や目の粘膜を通して体内に侵入する。
⒉ 侵入した抗原は、抗原提示細胞によって捉えられ、T細胞へ抗原の情報が伝えられる。
⒊ T細胞はB細胞へ抗原の情報を伝え、それに基づいてB細胞は、花粉に特異的なIgE抗体を産生する。
⒋ 花粉に特異的なIgE抗体が肥満細胞へ結合し、花粉に反応するようになる。
⒌ 肥満細胞上のIgE抗体に花粉が結合することで、肥満細胞が脱顆粒を起こし、ヒスタミンをはじめとする化学伝達物質を放出する。
⒍ ヒスタミンが血管に作用することで、目のかゆみや鼻水が止まらないといったアレルギー症状が発現する。
ちなみに、花粉症の原因となる花粉は一般に、スギの花粉であることが多いですが、スギの花粉は雄花の中で作られます。雄花は7月の初め頃から10月の中旬にかけて作られ、花粉は雄花の中で成熟していくらしいです。スギの成長度合いと雄花の数などを考慮して、翌年のスギの花粉飛散予報を組み立てるみたいです。
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