
【医・食・情報をテーマに】北海道情報大学 医療情報学部 教授「医と食をテーマに掲げて…」
今回は、北海道情報大学 医療情報学部 教授の西平 順 先生に取材させていただきました!西平先生は、「医・食・情報」をテーマに掲げ、現在様々なプロジェクトに関わっておられるそうです。実は西平先生は僕と同じ大学のご出身であり、僕の大先輩にあたります。取材後半、僕らには意外な共通点があることがわかり、めっちゃ盛り上がりました!(笑)
医と食と情報
――先生、今日はお忙しい中、ありがとうございます。さっそくなのですが、先生にお聞きしたいことがたくさんありまして…。
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
――まず、先生の掲げる「医・食・情報」というテーマとは、具体的にどういうことなのでしょうか?
ヒトを対象とした食機能の科学的エビデンス、新たな健康情報科学の構築
「食の臨床試験」というものを確立しようとしています。それはどういうことかと言いますと、端的に言えば、被験者ある食材を実際に食べてもらって、その前後でデータを取るんです。それは、体重だったり、体脂肪率だったり、コレステロール値だったり…。それで、その「食材」が実際、具体的に健康に良いのだという”科学的なエビデンス”を確立させてあげるという取り組みです。例えば、「β-コングリシニン」という成分を多く含む大豆は動脈硬化の予防への効果が期待できたり、「ケルセチン」という物質を多く含むタマネギは認知機能障害の予防や改善に効果が見込める、といった感じです。例え同じ野菜でもそれが持つ効用は全然違うんです。だから、それらを比較して、より効用の高いものを選択してあげる。それを機能性が高い野菜と言います。つまり、機能性成分をより多く含んだ野菜ということです。ここで言うと、さきのβ-コングリシニンやケルセチンのような成分です。この機能性の高い野菜を食べることで、生活習慣病の予防や改善につながると考えています。
――なるほど。そうやって、同じ野菜でも、機能性の高いものもあれば、それほど高くないものもある。野菜に対する新しい価値を導入することにもなり、農家にとってもそれによって刺激され、活性化されそうですね。
江別モデル
現在は、北海道江別市を起点として、”食”を基盤にした健康コミュニティ管理システムの開発をしていて、その「江別モデル」を作っています。とくに、江別市では市内に健康チェックステーションを設置しており、そこで住民の血圧などの基本的な健康情報を取得し、そのデータを中枢のクラウド上に集積しています。そして、さきの「食の臨床試験」より得られた各種データなどと合わせて、様々な解析を行っています。これらの集積された健康情報データは、”地域健康ネットワーク”を介して地方自治体や提携する医療機関へ提供しています。
LiR:健康管理アプリ
現在、総務省と共同で開発に取り組んでいるのが、データネットワークを活用した健康レコメンドアプリ「LiR」の開発です。住民一人一人の健康データが中枢クラウドへ集められ、そこで様々な分析や解析が行われる。それをもとに、今度はアプリユーザーである住民一人一人に対して、自身の健康状態や食生活などの情報をもとにした健康に関する助言・アドバイスなどといった健康レコメンドを返すという仕組みです。そのアプリがこの「LiR」です。とくに、アプリ上でのコメントはすべてAIが自動で生成してくれます。
また、このアプリの凄いところは、食べ物の写真をとってあげるとその画像から食事のバランスや食生活に関するアドバイスが返ってくるんです。あと、その食事に点数をつけてくれたりもします。(笑)
――凄いですね!でも、画像をとって得られる情報って画像情報だけですよね、その画像情報だけで、食生活に関するアドバイスができるんですか。
もちろんその点についてはまだまだ開発途中です。画像そのものからは2次元的な情報しか得られないので…。ですが、現段階でもかなりの精度で写真の画像データをもとに適切なアドバイスを出せるようになっています。とくに、そのあたりは今後もっとたくさんのデータを集めて、そのうえでAIを用いてそれらを解析させたり、自動化させたりしてシステムを洗練化させていくつもりです。また、現在、コメントではなく音声で実際にやり取りができるようなシステムを開発中です。アプリに質問すると、それに対して音声で答えてくれるっていう。
――音声でやり取りできるシステムは凄いですね!!
個人が自分の健康を管理していく時代
これからは、個人が自分自身の健康を管理・維持していく時代だと思っています。
――個人が自分自身の健康を管理していく、ぼくも本当にそうあるべきだと思います。とくに、いまそのような動きがだんだん活発になってきている気がします。ぼくも、実際そうなってほしいと思っています。
株式会社ミルウスへの取材記事:個人が自分自身の健康データを自分のメモリーカードに保存して管理するシステム
そういう観点から、現在では、さらにより個人に根差した情報という意味で、遺伝子ベースでの解析も取り入れようと研究・開発を進めています。というのは、個人の「食」から得られる情報に加えて、そこに個人のもつ遺伝子情報を組み合わせてあげることで、遺伝的背景をもとにしたより個別的な健康アドバイスができると思っています。加えて、最近では”腸内細菌”に注目し始めています。これは理研と共同で研究・開発を進めています。
――すごい!とくに、腸内細菌に着目するというのは面白いと思います。
プロバイオティクス
とくに最近注目され始めているのが、「プロバイオティクス」というものです。私たちの腸内には一般に、約1000種、100兆個もの腸内細菌がいると言われています。その中には、善玉菌と言われる、腸内の状態をきれいにしたり、お通じの改善をもたらしてくれたりする腸内菌もいるわけです。乳酸菌やビフィズス菌などがそうです。腸内環境をバランスよく保てるかどうかが健康のカギになっていると言われています。このようなカラダによい生きた微生物のことを「プロバイオティクス」と言います。
――なるほど~。非常に面白いです。ところで、先生は現在、「医と食と情報」というテーマを掲げておられますが、そもそも「食」に注目するようになったきっかけは何なんでしょうか?
私自身もともと、薬の「治験」に関わっていました。厚生労働省から薬として承認を受けるために行う臨床試験のことを「治験」と言います。薬の開発の最終段階で実際に多くの患者様に使用していただき、その効果や安全性を詳しく調べるといったことをやっていました。それで、その「薬」を「食」に置き換えたら面白いんじゃないかって思ったのがそもそものきっかけでした。あとは、やっぱり北海道といえば「食」じゃないですか。(笑)
――たしかに。(笑)プロジェクトの理念と北海道の強みが上手くマッチしていますね。だからこそ、北海道発のプロジェクトとして、全国にこのプロジェクトが広がっていってほしいです。
はい。実はもうすでに全国へ発信していく準備は整っていて、徐々に全国へ展開しつつあります。こんど、このプロジェクト内容について信州大学でも講演予定です。また、現在アメリカなど諸外国とも共同で取り組みを進めているところです。最終的にはグローバルに展開させるつもりです。
――信州ですか?!ぼくもちょうど、去年の東医体(東日本の医学部対抗の大会)で信州行ってきましたよ!
そうなんだ!部活何してるの?
――卓球部です!
え!?俺もだよ(笑)もと卓球部。
――え!??(笑)マジっすか!ちなみにぼく、今年の夏から一応主将なんですよ。
え!?おれも主将やってたよ!凄いね。こんなことってあるんだ。びっくりだよ。
――そうなんですか!まさかの主将繋がりですね(笑)すげ~。こんなことあるんだ。
国内各地域における地域の特性に応じた優れた地域産業支援の取組等を表彰する制度である「地域産業支援プログラム表彰事業(イノベーションネットアワード)」のうち、とくに地域貢献のための産学官連携の取組に関して最も優秀な取組に与えられる「文部科学大臣賞」見せてもらいました!

こちらは「北海道科学技術賞」で送られたものだそうです。すごい存在感。それもそのはず、この作者の方がかなり有名な方で、ガラス工芸作家である「米原眞司」という方の作品なのだそうです。

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