
【薬学生から医学生へ】スーパー医学生「難病患者を救いたい」【その先へ…】
富山大学 薬学部を卒業後、北海道大学 医学部医学科に学士編入。医学生となった後も、まさに幅広く活動しており、現在は 全国の 難病患者 を救うべく、「難病プロジェクト」を立ち上げ、起業に奮闘中。また、大学では”がん幹細胞”の研究を行っているという。まさに、”スーパー医学生”。今回は、そんな 中村恒星 君(以下、こうせい)に取材してきました! すごい人です!
近澤 今日は、忙しい中 取材に協力してくれて本当にありがとう!
こうせい いえいえ!
近澤 こうせい とは最近知り合ったばかりだけど、すごい人だなぁ、といつも思ってたんだよね。薬学部をストレートで卒業してから、すぐに医学部に入ったんだよね?いわゆる「学士編入」。基本的に、学士編入の人たちって みんな凄いと思ってるんだけど、その中でも、こうせい が特にすごいなと思ったのは、他学部を卒業して、その直後にそのまま医学部にストレートで編入したという点。なかなか、いないよね?
こうせい たしかに、そうですね。(笑)
近澤 もともと すごい人だとは思うんだけど、今日は 特に こうせい が現在 立ち上げて、取り組んでいる「難病プロジェクト」について、お話を聞きたいと思っています。よろしくお願いします!
こうせい わかりました!よろしくお願いします!
薬学から医学へ
近澤 そもそも、「難病プロジェクト」の話に入る前に、なぜ、薬学部から医学部へ行こうと思ったのか?薬学から医学へ進もうと思った”きっかけ”について聞いてもいいですか?
こうせい 富山大学 薬学部時代はごくごく普通の真面目な大学生でした。(笑)ちゃんと授業を受けて、勉強して、部活して…。みたいな。(笑)
でも、大学3年のとき人生の転機が訪れました。Japan Heart(ジャパンハート)という医療ボランティアに参加し、ミャンマーに行ったんです。そこで、薬学生としてミャンマーの医療現場に入り、様々なボランティア活動をしてきました。
近澤 なぜ、ミャンマーへ行こうと思ったのですか?
こうせい もともと薬学部時代から、ずっと研究者になりたいと思っていました。しかし、医療研究はしつつも、実際の医療現場や 患者さんのこともよく知りたい。むしろ、知らなくてはいけない、と考えていました。具体的には、”脊髄損傷の治療薬”の研究を行っていました。ただ、「あれ?おれって何のために研究してるんだっけ……? 研究者も臨床=”医療の現場”を知らないとダメだ!」と強く感じたんです。しかし、現在の日本では なかなか”薬学生”が実際に医療の現場に入り、臨床の場で患者さんと触れ合い、そして、学ぶ機会が少ないとも感じていました。
「日本ではできないなら、海外行こう!」と思い、ミャンマーへ行くことを決意したんです。ミャンマーでは、手術室に入れてもらって、患者さんの患部をずっと懐中電灯で照らしてたり、患者さんの手を握って、「頑張ってください!!」って言ってたり…。とにかく、できることは何でもやってました。
そんな中、ある日、病院に一人の男の子が運ばれてきました。首のあたりに、ちょうど こぶしくらいの大きさの腫瘍を持った子で、どうやら その時点で助かる見込みはほとんど無い というような子でした。
しかし、手術は行われたんです。それで、近くにいた看護師に率直に聞きました。「どうして手術するの?」と。すると、「もしかしたら助からないかもしれないけれど、もし そうだとしても、少なくとも残りの人生をより良く、より楽しく生きてほしいから」と言われました。
ミャンマーの医療の現場を目の当たりにし、十分な医療制度、治療を受けられずに、人が亡くなっていく現状を突きつけられました。そのとき、明確に「なんとかしたい」と感じたんです。教育や医療、そうしたものをはじめとして、様々なインフラが整っておらず、同時に 軍事政権による社会的背景といった中で、ミャンマーの医療を何とかしたい。そう感じました。
その頃から、「医療システムそのものをより良くしたい」と考えるようになりました。医療のシステムを変えるためには、まず、現在の医学を学ばなくては。そう思い、医学部へ行くことを決意しました。
近澤 なるほど。素晴らしいですね!!しかし、実際に 医学部編入 試験となると、やはり 相当 難易度も高く、かなり大変だったのでは?
こうせい はい。かなり大変でした。(笑) 受験勉強と卒業研究を同時にやらなくてはならず、相当しんどかったです。朝は、毎日7時に起きて、まず2時間 受験勉強。それから研究室で研究。研究中も、フラスコ振りながら、単語帳読んだり…。家に帰ってからも、お風呂入りながら参考書読んだり。とにかく、すきま時間を見つけてはひたすら勉強してました。それ以外は、研究です。
近澤 凄いですね!!相当ストイックに自分を追い込んで、努力していたのですね。本当に素晴らしいと思います。現在の こうせい の”凄さ”の根源が垣間見えた気がします。
薬学部と医学部の違いとは
近澤 実際に、薬学部から医学部へ入って、感じたことはありますか?
こうせい 薬学部と医学部は、たしかに 同じ”医療”という括りの中では、同じような性質の学部だとは思うのですが、実際は、やはりその内実は大きく違うのだな、ということを強く感じます。主に感じるのは、ケミストリー的な視点があるかどうか?という点です。薬学部では、常にケミストリー的な視点から薬学という学問を追っていたように思います。具体的には、分子や電子といった よりミクロな視点。とくに、有機化合物という観点が軸にありました。医学部でも、たしかに、そういった視点はありますが、少なくとも、医学教育カリキュラム全体を通して、常に そのようなケミストリー的な視点があるわけではないですよね。むしろ、当然ですが バイオロジー的な視点がメインになってきますよね。
近澤 たしかに、その通りです。
こうせい ぼくは、薬学部出身というバックグラウンドを活かして、まさに、「バイオロジー×ケミストリー」という掛け合わせを 自身の一つのテーマとして意識しています。このように、「医学×他分野」といった形で、もっと いろいろな分野が医学と掛け合わさっていって欲しいと思っています。
近澤 僕も同感です。ちなみに、医学部を卒業したあとの進路という点については どう考えていますか?
こうせい 「自分がいなくても 他の誰かができてしまうことはやりたくない」と思っています。自分にしかできないことをやりたい。そういう意味で、やはり、いわゆる ”研究医” の道として進んでいこうと思っています。
薬学から医学、その先へ…

こうせい 世の中って本当の意味で、新しいもの って無いように思います。いわゆる、イノベーションの本質って、すでにある何か と 他の何か を掛け合わせることではないかと。そういう意味で、僕自身も イノベーションを起こしたいと思っています。それが「難病プロジェクト」です。
全国には難病に苦しむ患者さんが数多くいます。しかし、なかなか、そうした人々の存在や現状をよく知る人は多くないように感じます。また、その市場規模の狭さなどから、難病に対する治療や製薬研究・開発といったものがなかなか活発に行われていないという悲しい現状もあります。
そのような中で、全国の難病患者さんを一人でも多く救いたい。そう思いました。今考えているのは、難病患者さんと研究者を直接つなぐプラットフォームです。実は、現在 難病患者さんと研究者が直接的につながる という場がありません。難病 研究者は、知り合いの医師から難病患者さんを紹介してもらって 初めて両者がつながる と言います。しかし、それでは、根本的に難病研究は促進されません。僕は、難病患者さんと研究医を直接つなげる場をつくることで、難病研究・開発をより一層 促進させたいと考えています。そうすることで、より多くの患者さんが救われるからです。
なぜ、僕がこの「難病プロジェクト」を立ち上げたかというと、僕自身が難病を持っているからです。”ファロー四徴症”という心臓の病気です。(この病気について)
現在は、様々な 難病 患者会へお邪魔させてもらって、実際に 患者会の方たちにお話しを聞いて回っています。すると、多くの患者会は、そもそも その”運営”にとても困っていることに気付きました。患者会の中で 一部の人たち(アクティブユーザー)に運営負担が集中しているのです。とくに、情報発信の部分です。まさに 難病を患っている方たち自身が、ウェブサイトの運営やチラシ・冊子の作成を行っているのです。これは大きな問題だと思いました。そこで、まずは全国の 難病 患者会を一つのプラットフォームに集約し、その 情報発信 の部分を担おうと考えています。
近澤 なるほど。そうなのですね。
こうせい 患者会の役割って何なのか?ということを考えたとき、二つあると思っていて、それは、「外への窓口」ということと、「患者さんの居場所」です。外への窓口というのは、まさに 情報発信 という意味です。これは、当然 必要なのです。そして、さらに重要だと思うのが、患者会が「患者さんにとっての居場所」となっている必要があると思います。つまり、ただ なんとなく患者会に入っているということではなく、もっと積極的に患者会そのものに関与でき、患者会が自分自身にとっての居場所であると より強く感じられるような……という意味です。
近澤 つまり、アクティブユーザーの拡大が必要だと考えているわけですね。
こうせい そうです。今、考えているのは、動画ベースで患者会の内外をつなぐということです。たとえば、難病に関する学会のライブ配信を患者会につないで共有する。患者会の紹介動画を一元化されたプラットフォーム上で発信する など……。とにかく、患者会の患者さん全員を当事者として巻き込んでいくことで、アクティブユーザーを拡大していけると考えています。
近澤 動画ベースでの情報発信にこだわる理由はあるのですか?
こうせい 情報発信という面で、テキストベースだと伝えきれないような”空気感”や”間”、”肉声”といったものを、よりそのまま伝えることができるのが「動画」だと思うからです。
そうした中、いま実際に、患者会が一元化されたプラットフォームで動画ベースの情報発信ができるようなウェブサイトを設計中です。
近澤 もう すでに「難病プロジェクト」が着実に動き始めているわけですね。「難病プロジェクト」のこれからがとても楽しみです!また、こうせい の今後の活躍からも目が離せません!
本日は、ありがとうございました!
こうせい ありがとうございました!
こうせい君 のブログも要チェック!!